抱き締める力が強いからって
気持ちをはかる材料にはならないけど
やっぱり 何処か 何か 疼いて
躯が折れる程 包んで欲しい・・・
SOMETHING 'BOUT THE KISS
「恭ちゃんが作ってくれるもんはただでさえめっちゃ美味いのに・・・そこに特別に気持ちまで込められとったら───」
俺が作ってきたチョコを、口に入れて。
「最高に美味いに決まってるやんか・・・なぁ?」
嬉しそうにキスをしてくる哲平の口唇から、甘い香りが移ってくる。
「甘くて美味くて、とろけそうや・・・」
「ん・・・っ」
頬を撫でていた哲平の温かな掌。
何時の間にか、鎖骨の辺りを撫でてきてて・・・。
「てっぺー、手・・・っ・・」
「んー・・・ガマンしよか思ててんけど・・・・・無理v」
「あっ無理・・・って、お前もう・・・ゃ・・・んっ」
「めっちゃ誘ってくれとるもんな・・・?」
力の抜けてきた躯を横たえられて、着ていた服を脱いだ哲平がその服を背中と畳の間に差し挟んでくれた。
「好きやで、恭介」
力強い眼差し。
瞳には、艶と凶暴さが滲んで・・・。
そんな瞳で、その、低くて甘い、お前の声で・・・人の台詞を奪うなよ。
「それは俺の台詞だろ、バカ」
俺の服の裾を捲り上げた指でジーンズを下げた後、肌を重ねてきた哲平を抱き締めて、口づけた。
舌を絡ませて吐息迄貪りあってるその間に、カサカサと紙の擦れる音がして、哲平がチョコを漁ってるのが解る。
後で食べればいいのに・・・。
「は、ぁ・・・んっ」
解放された口唇から、吐息が漏れて。
耳に届く甘い響きに、躯が火照る・・・。
「その声も表情も・・・色っぽいな、ホンマ・・・」
チョコの甘い香りを漂わせる哲平の口唇が笑みの形を作って、また重なってきた。
指先で、胸の突起を撫でてきながら・・・。
「ふっ・・・んんっっ」
ピクンと勝手に跳ねる躯。
哲平の指先が胸から腰に移っていく。
甘いチョコレートと、哲平の指先が肌に触れてくるのと、ずっと、ドキドキしていた所為と・・・。
色々なことが、俺の理性を融かすんだ・・・。
「昨日の痕、まだ残ってんな」
腹の方へ下がっていった哲平が嬉しそうに呟いて。
何度も口づけを落としている箇所は、きっと昨日の行為の時に残された痕がついているのと同じ所だろう。
・・・見なくたって、解るよ。
「てっぺ・・・っ」
「ん・・・そんな可愛え声で・・・誘うてくれてんやんな・・・」
抗議、したんだよ。
でも、その台詞は、音に出来ずに、掻き消えた。
「や!あぁ・・・ぁんっ」
とっくに反応して昂ぶっていた中心に、哲平の熱い舌か絡まってきて。
思考も何もかもが吹っ飛んで、哲平の舌が濡れた音を立てるたびに脳天から足先迄痺れるような快感が走って・・・。
自分の口唇から、酷く艶かしい声が、抑えようもなく漏れ出してくる。
「は、あぁ・・ん・・・っくぅ」
あまりに直接的な快楽に、無意識に逃げ出そうと捩る腰を、哲平の手が掴んで。
「あぁ、こっちもか・・・?」
浮き上がった腰を抱えられて、濡らされた指が脚の内側から這わされてきて・・・
「あぁ・・っ」
昨日も哲平を受け入れた箇所に挿入されてくる。
「あぁ、ん・・・っっ」
弓なりにしなった躯は益々哲平の指を奥迄呑み込んで。
中で掻き回される指が、哲平しか知らない、俺の弱い部分を刺激する・・・。
「恭介・・・もっと、とろけさしてくれ・・・」
「はぁ・・ん、や、あぁぁ・・・っっ」
哲平の熱が、内側を貫いて・・・。
重なる躯。
荒い呼吸がお互いの顔に掛かる。
振り撒かれる、甘い香り。
抱き締めてくる腕。
「てっぺ・・・」
逞しい躯を、俺も、抱き締めたくて。
腰を押し進めてくる哲平に、縋り付いた。
ずっとずっと、ドキドキしてて。
家の鍵閉める時なんて、深呼吸して。
柏木邸が見えた時なんか、引き返そうかと思ったくらい、ドキドキしてた。
でも、あの時と、今のドキドキは、全然違うな。
どっちも感覚は違っても、お前を想ってて、お前のことが好きなことは同じなのに・・・。
不思議だな・・・哲平・・・。
--------------------------------------------------------------------------------
「・・・キツくなかったか?」
お互いに熱を放った後、身支度を整えてくれた哲平が、心配そうに瞳を覗きこんでくる。
「・・・へーき」
柔らかな感触の短い髪を撫でた。
「もう、へーき、だから・・・服、着ろよ・・・」
俺が、躯の下に敷いたままだから、哲平は、上半身裸のまま。
ジーンズだけの格好で、俺の躯の脇に手をついて、上体を支えていた。
「・・・さむい、だろ・・・そんな、格好じゃぁ」
風邪引かすの、嫌だから。
行為の余韻を引き摺ってまだ力が入らない躯を、寝返りを打つようにして動かして、哲平の服から退く。
「無理せんでええのに・・・優しい子やな・・・」
頬に触れるようにキスをしてから、衣擦れの音をさせ始める。
ちゃんと、着てくれたんだな・・・。
「こんなトコで寝たらアカン」
「ん・・・」
「恭ちゃーん?」
「ん・・・?」
「寝たアカンて、座敷行こ。エアコンよりこたつの方がええやろ?」
・・・・・座敷?
あぁ、此処、ご隠居の家だ・・・。
・・・・・ご隠居。
「・・・!!」
うとうとし掛けていた瞳がばっちり醒めた瞬間、躯が浮き上がった感覚がした。
何時ものように抱き上げられていて、視界が違っている。
「て、哲平!?」
歩き出す哲平に呼び掛けると、
「ん?ちゃーんとチョコ持っとるから平気やで?」
能天気な返事が戻る。
「いや、違う!そうじゃなくて・・・っ」
俺、全然抑えられなくて・・・散々、声出して・・・・・あぁ、恥かしい・・・っ
「・・・どしたん?また真っ紅んなって・・・可愛えなぁ」
馬鹿なこと云ってキスしてくる哲平のことを見上げる。
・・・一方的に文句云うのは筋違い、だよな。
俺だって・・・・・・抵抗、しなかった。
・・・・・望んでた、から・・・。
「・・・ご隠居も、お手伝いさんも、居るんだよな・・・?」
哲平の頸に回した腕に力を籠めて、更に抱き着いて、肩口に顔を埋める。
恥かしくって、クラクラする・・・。
「お手伝いさんはおるけど、ご隠居はおらへんよ。恭ちゃん来てすぐ出掛けてってん」
「・・・そう、なのか?」
恐る恐る、顔を上げて。
「全然、解んなかったぞ・・・?」
お前が無理矢理連行してた所為もあると思うけど・・・。
「ご隠居、あんま足音させへん人やからなぁ・・・・・でも、ほれ」
足で器用に座敷の襖を開けた哲平に促されて中を見遣る。
「な?おれへんやろ?」
「あぁ・・・確かに・・・」
よかった・・・。
ホッと息を吐いた頃、哲平が炬燵に座り込んだ。
俺のことを、抱えたまま・・・。
「・・・哲平?」
「なーなー恭ちゃん、コレもしかして全部味違うん?さっき喰うたヤツ違うかったやん?」
「あ、あぁ、そう、だけど・・・あの、降ろして・・・」
「そっかー・・・そんだけ愛情籠めて・・・ドキドキしながら作ってくれたんやんな・・・」
「てっぺ・・・ぁん」
チョコを含んだ口唇が、重なってくる。
俺の話なんか全く聴いちゃいないし。
チョコを口に運んだ指で、耳を撫でてきて。
勝手に声を上げさせて、嬉しそうな顔すんなよ、馬鹿・・・。
廊下から、ゆっくりと軽い足音が聴こえてきた。
誰かが座敷に向かって来ているのは明らかで、多分ご隠居だろう。
俺達が、此処に居るかもしれないと気遣って、戻って来たこと知らせようと、足音させてくれてるんじゃないのか?
「ふぁっんん・・・っ」
なのに、絶対解ってるだろう筈の哲平は、益々舌を絡ませてくる。
ふざけてる場合じゃないってのに・・・っっ
抵抗して、肩を押し退けようとしていた手から、力が抜けていく・・・。
カラッと、軽い音をさせて襖が動いた、と思う・・・。
哲平の、馬鹿・・・。
「お帰りなさい、ご隠居ー。恭ちゃんからチョコ貰いましてん」
何事も無かったように、嬉しそうに云い振らすなよ・・・。
漸く視界にご隠居を捕らえると、いつもの笑顔がそこにあった。
「あ、あの・・・っ」
挨拶しようと口を開き掛けた俺より先に、
「そうかそうか。何時もすまんねぇ真神くん」
挨拶されて。ニコニコと笑顔を浮かべたご隠居に
「哲平のこと、頼むな」
なんてお願いされてる。
・・・あの、今俺達がキスしてたの見てます・・・よ、ね?
何で無反応でいられるんだろう。
突っ込む程のことじゃ、ない・・の、かな・・・。
「は、はい、あの・・・」
いい加減降ろしてくれと頼もうと哲平の瞳を見つめると、
「大丈夫。オレも好きやで?」
訳解んないこと云いながら、また顔を近づけてくる。
「何してんだお前はっ」
「何もしてへんて〜」
「嘘吐け!」
「はっはっは・・・!」
ご隠居の笑いに混じって、携帯が鳴り響く。
俺の、携帯・・・。
「あぁっ!」
そうだ!今日仕事で・・・行く前に寄っただけなんだ・・・!!
多分事務所からじゃないかと、焦って携帯を探す。
何処にやったんだろうと、キョロキョロしてると、哲平が・・・ポケットから俺の携帯を取り出して・・・
「事務所からやな。もしもしー?」
「勝手に出るなーっ」
「恭ちゃん、暴れたらアカンて。躯まだ怠いやろ?京香ねーさん!こんちは、哲平ですー。すんません、恭ちゃん動かれへんようなってもうて・・・」
「哲平っ」
取り返したいのに、哲平の手に肩を抱かれていて、動けない。
「熱は・・・まぁ、熱いの中だけやし、すぐ下がる程度やと思います。あぁ、独りにはさせへんし、大丈夫ッスわ。はい、すんませーん」
・・・切っちゃうし。
「京香ねーさんが『お大事に』やって。後の方でオッサンの笑い声がしとったけど・・・TVやんな」
とか云いながら、また携帯を自分の服のポケットに仕舞おうとする。
「何でTVだ!?所長だろ!はぁ・・・明日またからかわれる。・・・・・お前の所為だぞ?こら、返せ」
手を伸ばすと、素直に掌の上に俺の携帯を乗せてきて。
「オッサンに苛められたらオレに云えや?仇取ったるからやぁ」
その手をグイッと引かれて、急に勢いよく抱き寄せられて、頬にキスをしてくる。
笑顔だし、上機嫌そうな顔してるけど、絶対本気で云ってるな、お前。
「真神くんのこと困らせるんじゃあないぞ?哲平」
ご隠居の声に、我に返る。
他のことに気を取られて忘れてた。
・・・簡単に気配とか消さないで欲しい。
「こらっ哲平!!」
どうして人前で平然とキスとかしてくるんだよ、お前はっ!
「困るなんて、そんなんしませんて。なー?恭ちゃん!」
頬擦りしてくる哲平に、溜め息が出てくる。
何でこりないんだ?こいつは・・・。
「もう充分困ってる」
「・・・・・チョコくれたん、後悔しとる?」
「・・・急にシュンとすんな、馬鹿」
そんな訳ないだろ。
作ったことも、渡したことも、後悔なんてないよ。・・・けどな?
「反省する前にいい加減降ろせよ・・・」
「いーやー!無理やもん。恭ちゃ〜ん」
「無理じゃないだろっ」
此処に寄るのは仕事の帰りにすればよかったなって、自分の計画の甘さを後悔してるよ。
お前が、こんなに喜んでくれるなんて・・・思わなかったから、な。
ギュッと抱き締めてくる、哲平の腕を見つめて、思う。
此処に包まれるの、俺、好きなんだなって・・・。
でも・・・。
「人前ではしなくていいんだってば・・・」
「せやったら、オレの部屋行くか?」
「どれ、じゃあもう一度ブラッとしてこようか・・・」
「ち、違います!そう云うんじゃないですからっご隠居、あの・・・っ」
「気ぃ付けたって下さいねー」
「笑顔で送り出すなぁっ」
了
--------------------------------------------------------------------------------
真改さまよりSSを戴きました〜♪
裏MPページ内、裏コミックスの「最後に”気持ち”のエッセンス」
の
「続き」を書いて下さいました! 有難うございますーーーっ!!
いつも自分は「我ながらなんちゅう話を書いとるんやーっ!」と改めて読み返して
恥ずかしくなって来るのですが(いや、この話に限らずいつものコトですけど。)
まさか拙作の続きに素敵SSを書いて戴けるとは思って無かったので…
驚くと同時にとても嬉しかったです〜♪
嬉しそうな哲平ちゃんとさり気ない気遣いの素敵なご隠居と
怒ったり恥ずかしがったりしながら、それでもやっぱり
きちんと哲平ちゃんの事が好きで幸せそうな恭ちゃんがいいですねっ…!
哲平ちゃんは恭ちゃんに抱きついたり、頬擦りしたり、じゃれたり、
キスするのも抱き上げるのも好きなんだけど、
恭ちゃんも哲平ちゃんの腕に抱かれてるのは心地良いんですねvv
素敵ラヴラヴかっぷるです。いいなあ〜!(*´▽`)
しかし、漫画描く時…物凄くアバウトに書いてる所の設定を
無理矢理曲げる事無く、巧くフォロー入れて戴いてる感じですね〜。
い、いつも、てきとう漫画で投げっぱなしなんで
ちゃんと考えて描けば良かったなあと申し訳なく思いつつ;;
(強制連行先とかね、お仕事とかね、まあ色々。描かないからいっかーと
細かいコト考えて無かったので…;;; えへへ☆<誤魔化すな)
アバウトな話で…す、すみません。あわわわわ。
あと、どうでもいいけど挿絵差し込みすぎですね…。
ストーリーを読むリズムの邪魔にならない様にとは思っているのですが、
絵の浮かぶシーンが多くて困りました。
取り合えず、描きたいけど差し込むと邪魔になるなあという物は
こちら
に纏めましたので、宜しければこちらもご覧下さいませ〜。
真改さま、素敵なSSをどうも有難うございましたっ!!
真改さまのHPはこちら→
|